Research Abstract |
加工技術者の思考過程や価値観は,彼等が従事する生産環境やそれによって形成する生産文化によって異なる.本研究ではこのような加工技術者の意思決定過程に基づいた機械加工工程設計システムの開発を目的とし,マシニングセンタ加工における加工順序と各加工工程の切削条件・工具を選定する問題について検討した. 一般に工程設計者の意思決定の大略は,与えられた製品情報に対して(1)加工イメージの想定,(2)加工トラブルの予測,(3)加工トラブルの回避によって工程設計情報を生成する.本年度実施した調査によれば,加工イメージを想定する過程では,工程設計者は自身の経験に基づいた標準的な作業を考えていることが明らかとなり,計算機上ではフレーム型の知識表現法によってこれを処理することとした.一方加工トラブルの予測と回避については,加工状態に関する物理的な判断が中心となる処理と,生産管理や工程設計に対する技術者の考え方などの戦略的判断が中心となる処理に分けられることが明らかとなった.なお前者の処理については,切削理論アルゴリズムとニューラルネットワークによって,実際の加工データから加工特性を把握し,加工状態を予測するシステムが既にできている.そこで本年度は,工程設計者の戦略的判断に基づいた意思決定過程に対して同定システムを開発した.技術者の戦略的判断においては,その作業で考慮する項目の優先関係や順序関係が重要であり,これによって生産文化の違いを見い出すことができる.計算機上では考慮項目を思考オブジェクトとし,それらをネットワークで表現した思考モデルを用いてこの処理を実施する.そこで各思考オブジェクトの結合関係を,工程設計者との対話形式により自動的に同定し,ニューラルネットワークによってその結果を学習するシステムを開発した.これにより工程設計者の思考モデルに基づいて,生産文化を考慮できる工程設計システムを試作した.このシステムを二,三の簡単な工程設計問題に適用した結果,その妥当性が確認できた.
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