Research Abstract |
熱帯マメ科樹種のAcacia mangium Wild., Leucaena leucocephala (Lam.) de Wit, Paraserianthes falcatiaria (L.) Neilsonについて,酸性土壌で想定されるアルミニウム過剰に対する成長反応を調べ,適応的に働く代謝系であるかどうかを調べた。省スペースのため,植物組織培養用の試験管内で無菌条件で発芽した実生を用いて実験をおこなった。予備実験の結果から,アルミニウムを基本培地(長尾培地)に添加するとアルミニウムとリン酸が共沈することがわかった。このレベルはリン酸欠乏ストレスをおこしうるものであった。アルミニウム過剰とリン酸欠乏の反応を区別するため,アルミニウム過剰区ではpH4に培地を調製してアルミニウムとリン酸の共沈する量を減らし,さらにアルミニウムを添加しないリン酸欠乏区を設定した。アルミニウムを過剰に添加した培地で50日間栽培したところ,すべての樹種の根の成長が抑制された。しかしその成長抑制の程度は樹種によって異なり,Paras erianthes falcatariaが最も抑制されず,Leucaena leucocephalaが最も抑制された。リン酸欠乏区ではいずれの樹種も根の成長が抑制されなかった。ストレスに対し何らかの適応的な機構により誘導されうるパーオキシダーゼとフォスファターゼ,硝酸還元酸素,ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼの活性を定量したところ,Acacia mangiumのリン酸欠乏区で特異的にフォスファターゼ活性が誘導された。これはリン酸欠乏に対する何らかの適応的な反応であると考えられる。他の2種ではアルミニウム過剰やリン酸欠乏によるフォスファターゼ活性の誘導はおきなかった。Paraserianthes falcatariaのホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼの活性は他の2種に比べて高く,アルミニウム過剰に対する耐性に関係していると考えられた。現在これらの酵素遺伝子の既知の塩基配列から用いプライマーをそれぞれ作り,リバースPCR法を用いてmRNAからcDNAクローンを作成,クローニングする準備を進めている。これらのcDNAクローンをプローブとしてmRNAレベルでのストレス誘導を調べ,遺伝子の発現抑制段階での適応反応を探る計画である。
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