Research Abstract |
1 農業の外部経済効果を評価するために,日本農業に対する適用例を中心に,環境評価に関する既往の研究のサーベイを行った.そのなかで,より広い範囲の外部性を評価できると考えられるヘドニック法とコンティンジェント評価法(CVM)については,理論的な背景と推計上の問題点の両面から重点的に考察した. 2 ヘドニック法では,観察単位の大きさによって推計結果が異なるという傾向がある.市町村を観察単位をした研究では,農業生産に付随する環境便益に対して正の評価額が得られているが,第3次メッシュを観察単位とした研究では,一般に正の評価額を得られていない.そこで,宇都宮市を対象に第3次メッシュを観察単位とした推計を行ったが,環境便益に対する正の評価額は得られなかった.しかし,推計方法に改善の余地はある. 3 CVMに関しては,独自の推計を行うには至っていない. 4 農業生産によって生み出される外部経済効果を評価し価格に反映させることができた場合に,農産物価格にどのような影響があるかを,拡張投入産出表を作成して試算した.取り上げた外部性は,水田のもつ「洪水防止機能」のみであり,貨幣評価額は,三菱総研が代替法で推計した結果である1兆2310億円を利用した.この評価額を産業連関表に組み込み,価格分析を行った結果,米のシャドウプライスは39%低下し,精穀(精米)のシャドウプライスは31%低下した,すなわち,水田の「洪水防止機能」に対して,米の生産者が報酬を得ることができれば,精米の価格が31%低下しても現在と同様の生産水準が維持できるということである.
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