Research Abstract |
1.犬糸状虫成虫の虫体抽出液投与によるショック(成虫ショック)の誘発物質は,虫体全体に存在する耐熱性で高分子(分子量10,000以上)の非タンパク質である。また,成虫ショックの性格は,同じく耐熱性で高分子物質のリポ多糖(エンドトキシン)を原因とするエンドトキシンショックと類似している。しかし,成虫ショックの発症には,エンドトキシンショックの主要メディエータである腫瘍壊死因子(TNF)は関与していないことを,Wehi164細胞を用いたbioassay法により明らかにした。 2.成虫ショック発症前および発症後の血漿中ヒスタミン濃度を蛍光法により測定し,ショックのメディエータとしてヒスタミンが関与していることを突き止めた。 3.成虫ショックは寄生虫フリーのSPF犬にも発症すること,またウサギ受け身皮膚アナフィラキシ-反応により,ショック発症犬の血清には抗犬糸状虫IgE抗体を認めないことから,成虫ショックはIgE抗体非依存性に発症することが判明した。 4.イヌ粘膜型肥満細胞を用いたin vitroでのヒスタミン遊離試験において,虫体抽出液が用量依存性にヒスタミンを遊離することを明らかにした。またこの細胞培養法によるin vitro実験系が,ショック誘発物質の分離・精製において検出系として利用できることが判明した。 以上の結果から,虫体抽出液に存在するショック誘発物質は,肥満細胞をIgE抗体非依存性に脱顆粒させる物質であることが新たに明らかになった。
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