Research Abstract |
先に歯周炎罹患者の歯肉溝滲出液中にインターリュウキン1(IL‐1)活性が極めて高いこと、歯肉組織中にはIL‐1 mRNA陽性細胞が数多く存在し、他の炎症性サイトカインのmRNA発現細胞についても報告している(The American Journal of Pathology,1991;Immunology,1992;J Periodont Res,1993)。さらに、本教室の所らはRNase Protection Assayにより、歯周炎歯肉組織中の炎症性サイトカインのmRNAの半定量的な比較を行った。平成7年度は、各種サイトカインIL‐1α,IL‐1β,IL‐2,IL‐4,IL‐5,IL‐6,TNFαのジゴキシゲニン標識RNAプローブを用いてin situ hybridizationを行った。炎症歯肉組織局所でのmRNA発現細胞をカウントし各種サイトカインの発現パターンについて主成分分析を行った。その結果、サイトカインの産生パターンによりTh1タイプとTh2タイプに分けられているが、歯周炎の進んだタイプではTh2タイプの産生するサイトカイン(IL‐4,IL‐5)の発現が比較的多く観察された。これは、先の本教室山崎らの免疫組織化学的なアプローチでの結果(Clinical and Experimental Immunology,1995)を裏付けたものとなった。歯周組織局所で何が起こっているかを考察する時、サイトカインのmRNA発現の変化を組織学的に調べることは、より発展した見解を得る一助となると考えられる。つまり、歯肉炎から歯周炎への移行や歯周組織破壊の進行度のちがいを、サイトカイン産生パターンの変化と言う見方で理解できる。歯肉の炎症組織中に浸潤しているT細胞のタイプ及びそれらが産生するサイトカインについての今後の研究に新たな示唆を与えた。
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