Research Abstract |
本研究では,1)運動方程式の決定→2)初期値およびパラメータの設定→3)最適解の導出→4)実際のレースペースとの比較→5)パラメータの設定し直し 以上のような経過を経て,妥当と思われる運動方程式や各パラメータを設定して,レース中の泳速度変化のシミュレーションを行い,各泳者のポテンシャルを最大限に活かすペース配分を決定した.まず本研究において水泳運動は,重心を質点とする移動運動であると定義し,レースペースを考察することを主な目的としているので,モデルは出来るだけ簡略化するよう水泳中の重心の上下動を無視して,質点を水平方向に移動させるだけと考えた.その結果,次式ような運動方程式が成り立つ.(M+m)(dv)/(dt)=F-AD M:泳者の質量,m:付加質量,v:泳速度,F:推進力,AD:自己推進時抵抗 次にスイミングに必要な筋運動のパワー源について考えると,上式の両辺にvを乗じることで,この方程式をエネルギーレベルでとらえることが出来る(パワー=力×速度:P=F×v).この推進パワーをまかなうエネルギーは,ATP-CP系,無酸素系,有酸素系の各代謝系から供給される.その中で無酸素系の供給量は,任意に発揮レベルα(0≦α≧1)によってコントロールされ,これによって泳速度が決定される.ただし無酸素系エネルギー供給が進むと,乳酸が蓄積され,筋収縮が困難になる生理学的事実を考慮し,αのレルに応じて負のフィードバックがかかり,有酸素系エネルギー発揮が減少するようモデリングした.本研究では,最適制御理論をこのモデルに応用し,αを最適制御することによって自己の持つエネルギー資源を最大限に利用して,最高のパフォーマンスを得られるペース配分を求めた.その結果,短距離(30秒以下)においては,レース開始直後より,すべてのエネルギー供給系を全開にする必要があるが,1分以上のレースになると,ラストスパート的にレース後半にペースを上げなければならないことが証明された.
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