Research Abstract |
Clinostomum属吸虫の幼虫(メタセルカリア)を各種淡水魚(中間宿主)から回収し,各種人工培地(Glucose加Earle平衡塩液,199培地,ダルベッコ変法イ-グルMEM培地),8日齢の鶏卵への移植,マウス腹腔への移植により培養を行った。人工培地での培養は好気的および嫌気的条件で行った。マウス腹腔から5日目以降に回収された虫体の子宮には虫卵が認められたが,その他の条件下では虫卵未形成の未熟虫体のみ回収された。人工培地成分の検討や,二相化培地(液相-固相)での検討が今後の課題である。 Clinostomum属吸虫の皮棘を光学顕微鏡,走査型電子顕微鏡で観察し,淡水魚から検出した被嚢幼虫に単生の皮棘を認めた。光顕像では,突出部のうち埋没した皮棘は見出せるが,襞状組織は観察できなかった。電顕像では,皮棘は体表の襞状組織に包まれた半球状ないし三角錐突出部の先端にのみ認められ,埋没部は観察できなかった。ゴイサギやオオミズナギドリ(終宿主)に寄生した未成熟虫体では,光顕像で直径約1μmの小型の皮棘を認めたが,電顕像では体表は微細粒状物のみに被われており,皮棘はその下に埋没していると考えられた。各種人工培地および鶏卵で培養された虫体では皮棘が認められたが,日数が経過するごとに消失する傾向が見られた。マウス腹腔内から回収された虫体では,成熟虫体では皮棘は消失したが,一部の未熟虫体には皮棘が観察された。また,人体寄生例の成虫(松江市,日本第15例)では,光顕下で皮棘は認められなかったが,微細粒状物は全表面に観察された。これらの結果から,終宿主体内では最初に体表の襞状組織が失われ,粒状物で修復後,最終的に皮棘が消失することが示唆された。
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