Research Abstract |
古地磁気測定と帯磁率測定による被熱遺構探査法の開発を進めている.古地磁気学的な手法はほぼ確立した方法であるが,遺跡面から試料を採るという破壊的な方法であり,大変な労力と経済的負担を伴う.新しい方法として非破壊で非常に簡便な帯磁率測定を提案し,その有効性を調べてきた. 今年度は重点領域研究の最終年度で,まとめの実験,測定を行った.結果は以下のようにまとめられる.風化土壌,風化火山灰については加熱により,鉱物が変化し,200度程度の被熱により,帯磁率,残留磁化強度ともに増加することが確かめられた.火山灰については,帯磁率は変化せず,磁化強度のみが増加することが明らかとなった,帯磁率の変化は鉱物の変化,磁化強度の変化は残留磁化の変化に対応する.この結果は,恩原1遺跡(火山灰)及び真人原遺跡(風化土壌)における焚き火実験の結果と矛盾しない.七日市遺跡における焚き火実験の経年変化観測の結果,2年程度で帯磁率は減少するが,被熱の痕跡を残すこと,また,,広野遺跡における被熱遺構探査の結果,赤化土壌は2000年以上,土壌の磁気的性質の変化を保存していることが明らかとなった.土窯方式による被熱実験の結果にも,被熱による土壌の被熱による磁気的性質の変化が認められた. 今年度の結果と現在までの結果をまとめると,200度程度の被熱により,土壌の磁気的性質が変化すること,その変化は保存されることが明らかとなった.ただし,火山灰のように水酸化鉄の含有量の少ない土壌の場合は,帯磁率の変化として観測されないので,磁化強度測定を行う必要がある.これは事前の土壌の室内被熱実験により確かめることができる.被熱遺構探査に土壌の磁気的性質の測定を利用することの有用性が確かめられたといえる.今後,被熱の際の酸化状態,温度,時間と遺跡で観測される磁気的性質の異常の関係を明らかにする必要がある.
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