Research Abstract |
マリ-・ヴィグマンの舞踊創作において記述されていたスケッチについて,言語的側面からの数量的分析を試みた.昨年度の「春の祭典」,「アルチェステ」に引き続き,今年度は「サウル」を中心に数量的分析を行なった.研究の方法は,昨年度とほぼ同様に,動きに関する言葉を抽出し,出現度数,出現率を求めた.次に,ラバンのエフォートグラフをカテゴリーとして設定し,林の数量化理論第3類を適用した. その結果,固有値は,上位の解より,0.622,0.527,0.289となり,累積寄与率は,解1が28.8%,解2が53.2%,解3が66.6%となった.解1と解2の平面布置によれば,Time Sustained,Weight Strong,Space Directといったカテゴリーが最も距離が短く,「重量感のある短い動き」が,エフォートグラフ上での強い結び付きが認められたことが第1番目の特徴である.第2番目には,Weight light,Space flowが類似度が高かった.上位の解についての考察は,[fighting]的な方向性に強い結び付きが認められたことをあげることができる.この結果は,昨年度に報告した2つの作品についても共通して言えることであるが,ヴィグマンの作品の特質を形成するものとしてとらえることができる.また,[fighting]的なエフォートは,ニーチェで言うところのディオニソス的側面と換言されることがあるが,一方でヴィグマンの舞踊の特徴をディオニソスであると評する見解があり,この見解と同様の結果が3つの作品の数量的分析から得られたことは,注目すべき点であると考えられる.
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