Research Abstract |
本研究は,重点領域研究「現代中国の構造変動」の一部「現代中国における歴史的連続性と不連続性」の研究を踏まえ,現代中国の変動中に現れている諸問題の中に貫通している「伝統」と「近代化」の関係とその矛盾を究明するものである。 中国の歴史構造変動過程の諸問題の中には,伝統文化と近代化の関係及び矛盾が、一貫して存在している。この問題を研究することの必要性と重要性はますます大きくなっている。 阿片戦争かた今日に至るまで,150年余りの歴史の中で中国の伝統文化と「西洋の衝撃」及び「西洋に学ぶ」という西洋文明受容の態様とが混成している。伝統文化と西洋文化に対する認識には全面国粋論と全面欧化論が現れ,また,この二つの思惟方式は交差的に存在して,近代化の流れの中で伝統文化への対応問題に関わっていることは周知の通りである。 この葛藤において,近代中国知識人の伝統文化観と近代化の関係は極めて緊密である。本研究は,蔡元培文化思想の考察を通じ,近代中国知識人が思想文化の発展と変化に果たした役割を究明し,知識人達が伝統文化を保持しつつ,西洋文化を吸収し,中国文化近代化を実現するまでの考え方式を明らかにしたい。 今回の研究機会を得,一年の研究によって,蔡元培の「伝統」と近代化思想を究明したのみならず,近代中国知識人の中国近代化に対しその役割の全貌も把握することができた。また,中国の近代化と伝統文化の様態を明らかにすることができ,また,激しい変動中の中国における知識人の役割もはっきりさせることができた。 研究代表者は,蔡元培の未発表の日記を整理し,新しい研究視野及び問題意識を提起し,従来の研究観点を再検討し,蔡元培研究において新しい成果を得た。 ここに強調したいのは,本研究方法は,近代思想史のみならず,政治学,経済学,文化人類学等の手段を交差させて学際的研究を方法として,また,日本近代化の中国近代化への影響を含む多視角から蔡元培の伝統観と近代化思想の面を分析し,また,中国近代知識人と国家の間の関係及び役割,特に,中華思想及び秩序と西洋文化の検討を重ね,それを通じて今日中国近代化する中に直面している精神文明及び文化再構築などの問題の再認識することができた。この延長上に,21世紀の中国現代化発展の行方を認識した。
|