高分子混合系の臨界点近傍における光反応ダイナミックス
Project/Area Number |
08218234
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research on Priority Areas
|
Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kyoto Institute of Technology |
Principal Investigator |
QUI Tran-Cong 京都工芸繊維大学, 繊維学部, 助教授 (50188827)
|
Project Period (FY) |
1996
|
Project Status |
Completed (Fiscal Year 1996)
|
Budget Amount *help |
¥1,900,000 (Direct Cost: ¥1,900,000)
Fiscal Year 1996: ¥1,900,000 (Direct Cost: ¥1,900,000)
|
Keywords | ポリマーブレンド / 光二量化反応 / 光異性化反応 / 臨界挙動 / Kohlrausch-Williams-Watts / 自己触媒性 / 正のフィードバックループ |
Research Abstract |
二成分高分子混合系において、光照射によって片方の分子鎖の化学構造を変化させると、混合系が不安定になり、反応が進行している最中に相分離が起こる。Polystyrene/Poly(vinyl methyl ether)(PS/PVME)ブレンドを用い、PS鎖上にラベルしたアントラセンの光二量化反応を行い、相分離を誘発した。得られたモルフォロジーはミクロン域のラメラ構造であり、同じ方向のラメラを有する領域の大きさが100μm以上に及んでいることが観測された。相分離構造に見られるこの空間的コヒートレント性は、混合系が不安定になってから相分離するまでに生成した様々な濃度ゆらぎと光反応との特異的なカップリングに起因すると予測される。ここでは、混合系中のPS鎖上にラベルしたアントラセンの光二量化(分子間反応)のみならず、trans-stilbeneの光異性化(分子内反応)の動力学も広い温度範囲にわたって観測・解析した。 共存曲線の近傍で架橋反応を行う場合、架橋密度があまり高くないうちに、新たな共存曲線が実験温度に達して相分離が起こる。初期では、光反応が進行し、アントラセンの数は減少していくが、共存曲線が実験温度に近づくにつれて、濃度揺らぎが増幅される。反応の進行と共に引き起こされた濃度ゆらぎのPSC-rich領域内でアントラセンの局所濃度が次第に増加し(濃縮効果)、反応を促進する。この現象は、混合系が相分離するまで繰り返して起こることがわかった。すなわち、ブレンドの共存曲線が実験温度の近傍に近づく際、架橋反応に誘起された濃度ゆらぎが架橋反応を促進し、その自己触媒的挙動を引き起こしたものであり、光照射下で両者の間にPositive Feedback Loopは形成されたと結論できる。このFeedback Loopにより、弾性歪が急速に集積され、結果的にミクロン域のコヒーレント性の空間的構造が形成し、メゾスコピックのラメラ構造が発現した原因になる。一方、Stilbeneの光異性化反応を同様な条件で行う場合、この自己触媒的挙動が観測されなかった。これらの結果より、分子間反応であるAnthraceneの光二量化反応を比べて、Stilbeneの異性化のような、長距離にわたる拡散を必要としない分子内反応を用いて相分離させる場合、その動力学は顕著に濃度ゆらぎの影響を受けないことが判明された。
|
Report
(1 results)
Research Products
(6 results)