Research Abstract |
本研究ではまずNi,Ni-20Cr-1Si,Ni-20Cr-1Si-0.5(Ti,Zr,La,GdまたはHf),Inconel 690(Ni-30Cr-9Fe,Inconel MA754(Ni-20Cr-0.6Y_2O_3-0.5Ti-0.3Al)およびInconel MA956(Fe-20Cr-4.5Al-0.5Y_2O_3-0.5Ti),並びにこれらの金属・合金を酸素中,1273Kで3.6ks間の予備酸化を行った試料について高温腐食を行った。腐食は1073Kで3.6ks間,臭素分圧を9kPa,酸素分圧を5Paとし,全圧はアルゴンを加えて101kPaとした。これらの合金の腐食前後の質量を測定し,質量変化量を測定した。一部の試料について腐食後の外観を観察し,その後スケールの結晶相をX線回折装置を用いて明かにした。さらにスケールの形態をSEMを用いて観察した。質量変化量の測定から,Inconel 690およびInconel MA956では予備酸化後の質量変化量の方が予備酸化なしのそれらよりもそれぞれ負に大きかった。しかしながら,予備酸化なしInconel 690およびInconel MA956の腐食後の外観観察より,これらの合金の腐食が著しいことから,必ずしも予備酸化なし合金の方が耐食性が良いとは言い難い。一方,他の合金ではいずれも予備酸化なし合金の質量変化量は予備酸化をした合金のそれらより負に小さかった。このことは,これらの合金では予備酸化をすることにより高温耐食性が改善されたことを示唆している。高温強度を考慮に入れると,Ni-20Cr-1Si-0.5(Hf,La,Gd)合金が高温耐腐食性合金と言えよう。次いで実用的な観点からN_2-H_2O-HBr(N_2:45vol%,H_2O:45vol%,HBr:10vol%)雰囲気における高温腐食(1273K,21.6ks)を行った。腐食試料としてはこれまでの研究結果からSiO_2-被覆Ni-20Cr-1Si合金の高温耐腐食性が優れていることが明らかになったので,このSiO_2皮膜の利用を考慮にいれて,高温腐食中における合金の自己補修機能の可能性を調べるためにNi-Si系合金(Ni,Ni-5Si,Ni-5Si-0.1Y,Ni-5Si-0.5HfおよびNi-10Siの高温腐食を行い,Siの影響について明らかにした。Siの添加はスケールの剥離を助長したが,SiO_2皮膜の生成も観測された。今後このSiO_2を生成させ,自己補修能力があるかについてNi-20Cr-Si系合金について検討する予定である。
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