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¥1,500,000 (Direct Cost: ¥1,500,000)
Fiscal Year 1996: ¥1,500,000 (Direct Cost: ¥1,500,000)
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Research Abstract |
我々はCuGeO_3が無機化合物では初めてのスピン・パイエルス転移を起こす物質であることを発見した.この研究ではCuGeO_3とその置換物質の詳細な研究と,CuGeO_3の周辺物質で磁性の観点から特筆すべき性質を持った物質の探索を行った.CuGeO_3はCu^<2+>をZn^<2+>で置換するとスピン・パイエルス転移温度が降下する以外に新たに別の相転移が起こることも我々が発見した.この相転移が反強磁性相転移であることは今日ではあらゆる方法で確認されている.この相転移はスピン・パイエルス相という少なくとも純粋のCuGeO_3の場合にはスピン一重項状態から反強磁性相というスピンが古典的に現れる状態への転移であるため,一見不思議な現象であり,その現象を理解することは重要である.我々は中性子回折の実験により,反強磁性相では,dimerizationによる超格子反射と反強磁性長距離秩序による超格子反射が同時に観測され,また反強磁性転移温度までは温度の降下とともに増加してきたdimerizationによる超格子反射強度が転移以下では減少することを確認した.一方以前からZn置換したCuGeO_3では磁化容易軸であるc軸に沿って磁場を印加したときの帯磁率が絶対零度の極限でスピンからの寄与が0に近ずくことを観測していた.これらの現象を併せて考えると,反強磁性相では,スピン・パイエルス相と反強磁性相が相分離して存在するのではなく,二つの秩序変数:スピン・パイエルス状態の秩序変数(dimerizationの振幅に取って良いであろう)と反強磁性相の秩序変数(staggered moment)が試料全体で共存していると結論できる. CuGeO_3の周辺物質の探索においては新たにBaCuSi_2O_6とBa_2CuGe_2O_7が特異な磁性を示すことを発見した.BaCuSi_2O_6はCu^<2+>を含む平面2層からなる磁性体として理解でき,2つの面に属するCu^<2+>でdimerを形成しているとして良いことを,中性子散乱の実験で示した.Ba_2CuGe_2O_7ではspin spiral stateが基底状態であり,この状態はDzjaloshinskii-Moriya相互作用によって生じていることを示した.
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