Project/Area Number |
08231236
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research on Priority Areas
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
中辻 博 京都大学, 工学研究科, 教授 (90026211)
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Project Period (FY) |
1996
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Project Status |
Completed (Fiscal Year 1996)
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Budget Amount *help |
¥2,200,000 (Direct Cost: ¥2,200,000)
Fiscal Year 1996: ¥2,200,000 (Direct Cost: ¥2,200,000)
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Keywords | 固体表面-分子間相互作用 / Dipped adcluster model / SAC / SAC-CI法 / 量子化学 / STM(走査型トンネル顕微鏡) / 電子状態 / 表面触媒反応 / 電子的メカニズム |
Research Abstract |
本研究の目的は表面-分子相互作用系を有効に表現するモデルとその電子状態を定量的に記述できる理論の開発と計算である。平成8年度の研究成果は以下に具合的に述べる。 STM(走査型トンネル顕微鏡)の電子的機構の解明のため、Bardeenの摂動論に基づいてSTMの分子軌道モデルを提案し、これによりSTM像の理論シミュレーションを行った。STM像には分子軌道の位相が関与すること、つまり軌道対称則が存在することが示された。また、Pd及びAg表面上の吸着ベンゼン系で、チップ・サンプルの電子状態がSTM像に与える影響について分子軌道法による解析を行った。その結果、チップの構造とともに、サンプル内の分子間相互作用もSTM像に大きな影響を与えることを明らかにした。 STMの表面観察以外の利用法として、チップによる表面あるいは吸着分子の加工というものがある。我々は、このSTMによる表面加工がSTM像の観測に比べて高いバイアス電圧を与えることによって可能になるという事実から、サンプル-チップ間には非常に強い電場が生じているという点に注目し、この効果を取り入れた分子軌道計算による理論的考察を行った。Naクラスター、Cu表面上吸着COなどの研究結果から、STMによる表面加工にはこの強電場が大きな役割を果たしていることが明らかになった。 エチレンの部分酸化反応に対する銀の特異的な触媒作用に関する研究を行なった。表面-分子系の理論モデルとしてDipped adcluster modelを用いて、系の基底状態・励起状態の電子構造及びエネルギーをSAC/SAC-CI法などの量子化学計算により求めた。まず、貴金属銅、銀、金表面上における酸素活性化メカニズムの比較を行なった。銅表面ではend-on superoxide酸素種が不安定であり、原子状酸素種に解離しやすいことが判明した。金表面では分子状酸素種が存在しないことが理論的に明らかとなった。また、銀表面におけるプロピレンの酸化反応のメカニズムについても検討した。エチレンと異なりプロピレンはアリル-水素活性化による完全酸化反応を起こすことが明らかとなった。これらの研究結果から、銀表面上では特異的なsuperoxide種が存在することが示され、銀の特異的な触媒作用が発現することが明らかとなった。更に、銀触媒によるオレフインの酸化反応の一般的なメカニズムも示された。また、ホルマリン合成における銀の触媒作用の全過程の電子的メカニズムも解明した。
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