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¥2,000,000 (Direct Cost: ¥2,000,000)
Fiscal Year 1996: ¥2,000,000 (Direct Cost: ¥2,000,000)
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Research Abstract |
(イ)D-カンファーから得られる二環性アミノアルコールを不斉源に用いたジアステレオ区別反応:分子内にπ-電子過剰系チオフェン環とπ-電子欠如系ピリジン環を含む光学活性ヘテロヘリセンの合成では,電子不足なピリジン環の位置での光環化の収率が悪いので,Skraup反応によってチエノキノリン誘導体の合成を行った。ついで,チエノキノリンのホスホニウム塩とベンゾジチオフェンカルボキサルデヒドとの間でWittig反応を行い,1,2-ジアリールエチレンを得た。このオレフィンの光環化反応により,ヘリセンのジアステレオマ-を37:63の比で得ることができた。ジアステレオマ-をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで分離したのち,キラル源を取り除き,光学的に純粋なヘリセンの両エナンチオマーを得ることに成功した。両エネンチオマ-の比旋光度,CDスペクトルには良い対応が見られた。さらに,ラセミ体のヘリセンのX線結晶構造解析にも成功した。結晶中では,(P)-体と(M)-体が水素結合によって向かい合った構造をとっており,両末端の環の二面角は45.3度と,[7]チアヘテロヘリセンジオールの38.0度に比較するとかなり大きい値を有することを明らかにした。 (ロ)酵素を用いたラセミ体のヘリセンの光学分割:多量のキラルヘリセンを得る目的で,グラムスケールの光学分割を行なった。ラセミ体ヘプタヘリセンジオール1.00g,リパーゼCAL2.5g,ビニルアセテート20mlを用いた鏡像体区別反応により光学純度98%の(M)-(-)-ヘプタヘリセンジオールを442mg得ることに成功した。 以上のように,申請者が開発した手法により,さまざまなキラルヘテロヘリセンの合成が可能となった。これら螺旋分子は世界で初めて合成されたもので,その構造や性質,反応性の研究は極めて興味ある研究領域であり,今後の研究が多いに期待される。
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