Research Abstract |
ポリシラザンから合成されるSi-C-Nセラミックスは,分子レベルで組成制御が可能であり,傾斜機能材料や耐食性皮膜への応用が可能である.しかし,その組成制御に関する詳細は,充分解明されていない.そこで本研究では,ポリシラザン系高分子のセラミゼーションの過程および雰囲気の違い,熱処理温度・時間が組成におよぼす影響を明らかにすることを目的とした. セラミックス前駆体には,ポリシラザン(Si-C-N-H)およびポリボロシラザン(Si-B-C-N-H)高分子を用いた.ポリボロシラザンは,ポリシラザンとトリスジメチルアミノボランをNH_3雰囲気下,トルエン溶媒中で還流(383K,6h)し反応させて合成を行った.ポリシラザンは693K,6h,およびポリボロシラザンは673K,6hでAr雰囲気下において不融化処理(架橋反応)を行い前駆体物質を合成した.これらの試料をAr,NH_3各雰囲気で熱処理温度・保持時間を変化させ,非酸化セラミックスの合成を試みた.その構造変化,組成変化についてFT-IR,元素分析,XPS等を用いて調べた. ポリシラザン,ポリボロシラザンのAr,NH_3雰囲気中1273Kの熱処理でSi-C,Si-N結合を持ったセラミックスが生成することがFT-IRおよび元素分析により明らかになった.Ar,NH_3雰囲気での構造変化は脱水素反応から始まることもFT-IRから確認できた。また,元素分析の結果からNH_3雰囲気での熱処理で炭素の減少が著しいことが確認できた.Ar雰囲気では973Kまで緩やかに炭素量が減少するが,NH_3雰囲気では773Kから973Kの間で急激な炭素量の減少が起きる.さらに,NH_3雰囲気中の熱処理において,0時間保持した試料より2時間保持した試料の方が同じの熱処理温度ではより炭素量が減少する.しかし,1273Kでは試料中の炭素量はAr,NH_3両雰囲気ともほぼ同じになり,炭素の減少は一定量に達するとそれ以上起こらなくなると言える.以上より,ポリシラザン,ポリボロシラザンを前駆体物質としたセラミックスの合成において,熱処理中雰囲気のコントロールは,セラミックスの組成制御・傾斜化に適用できることが示された.
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