Research Abstract |
不斉シクロプロパンの新しい合成法の開発は大変重要な課題である。最近、我々は1-セレノ-2-シリルエテン(1)と求電子オレフィン(2)とのルイス酸存在下での反応で、新規なケイ素の1,2-シフトを伴う[2+1]環化付加反応により、シクロプロパン化合物(3)が得られることを見い出した。(1)と光学活性エステル基をもつオレフィン(4)の反応では、反応初期の付加段階の立体配置が保持されると考えられるため、(4)のπ面を選択し高ジアステレオ選択性が得られる可能性があり不斉シクロプロパン合成の新しい例となり得る。まず、安価に手に入れることのできる(1)ーメントールを不斉補助基とする光学活性エステル(4a,c,d)を検討した。 (1)とトリエステル置換オレフィン(4a)をZnI_2存在下-30℃、14時間反応させるとシス置換シクロプロパン(3a)が39%の収率,de92%で得られた((1)60%回収)。(1)とメチレンマロン酸エステル(4c)のZnI_2存在下で-30℃で90分,次いで0℃で30分での反応ではシクロプロパン(3c)とシクロブタン(5c)の混合物が99%の収率で約1.8:1の比で得られた。(3c),(5c)の混合物ではアルコール(6c),(7c)に還元したのち分離した((6c):81%ee,(7c):74%ee)。(1)と2-ホスホノアクリル酸エステル(4d)との反応では、SnCl_4存在下-78℃、4時間反応させるとシクロプロパン(3d)が70%の収率で得られた。NMRの解析よりほぼ単一のジアステレオマ-である。絶対配置の決定は現在行なっている。(1)と(4a,c,d)との反応における高いジアステレオ選択性は、不斉Diels-Alder反応類似に、反応初期において(4a,c,d)のπ面の(1)の攻撃が立体選択的に起こり、その後の各反応段階において立体が保持されたものと予想される。
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