Budget Amount *help |
¥1,800,000 (Direct Cost: ¥1,800,000)
Fiscal Year 1996: ¥1,800,000 (Direct Cost: ¥1,800,000)
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Research Abstract |
1.ラットの一過性脳虚血モデルを作製して超慢性期まで観察した.虚血後6カ月までは神経細胞死のみられない大脳皮質で1年を経過すると著明な神経細胞死が生じた.この細胞死に先だって鉄貯蔵蛋白であるフェリチンが大脳皮質に発現していた.また,過酸化脂質レベルは大脳皮質,海馬で虚血再潅流直後以外に虚血後6カ月でも上昇しており,線条体では虚血後1週間より持続的に上昇していた.このことは,たとえ脳虚血のエピソードが短時間かつ一過性であっても,その後晩発性に生じた沈着鉄,殊にフェリチン結合鉄により脂質過酸化反応が惹起され,その結果きわめて緩徐に神経細胞死が進行することを示唆する. 2.Iron responsive element (IRE)のプローブを作製し,脳組織からの核抽出液をサンプルとしてelectrophoretic mobility shift assayを行い,IRE結合蛋白の結合活性を調べ,線条体,黒質でシグナルを検出することが出来た.IREはフェリチン,トランスフェリンおよびトランスフェリンレセプターのmRNAの転写を調節しているエレメントであり,鉄代謝に重要な役割を果たしているが,われわれは,これまで末梢組織の一部のみで報告されていたIRE結合活性が脳内にも存在することを初めて証明した. 3.ラットの総頚動脈を永久結紮する慢性脳血流低潅流モデルの脳から抽出したRNAを用いたNorthern blotanalysisでは海馬,線条体および前脳基底部のいずれの部位においても虚血負荷によるトランスフェリンmRNAの有意な変化は認められなかった.以上から,鉄輸送蛋白であるトランスフェリンは安定していて変化しにくく,慢性脳虚血時の脳内鉄代謝においては鉄貯蔵蛋白フェリチンの変化が重要であることが示された.
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