Research Abstract |
内視鏡下経乳頭的に採取した膵液中のK-ras,p53の変異を検索し,膵癌(PC)におけるその診断的有用性を明らかにしようとした.得られた成績は以下のように要約される. 1.K-rasコドン12に対応したプロープにacridinium esterを標識し,膵液より抽出したDNAのPCR産物を反応させ,生じる化学発光値よりK-ras変異の有無と変異型を定量的に測定できるHybridization Protection Assay(HPA)法を開発した.本法は分離・洗浄という操作が不要であり,PCR後30分余りでK-rasの変異型まで判定可能である. 2.HPA法で内視鏡下経乳頭的に採取した膵液中K-rasコドンの変異を検討すると,PCの約2/3は10,000RLUs以上を示したが,慢性膵炎(CP)の大部分は5,000RLUs以下であり,10,000RLUsをカットオフ値にとると,膵液中K-ras変異の陽性率はPCで66%(19/29),CPで4%(1/26)であった.一方,従来報告しているPCR-RFLP法ではK-rasコドン12変異の陽性率はPCで81%(26/32)であり,CPでは19%(5/26)であった.しかし,PCR-RFLP法で陽性とされたCP5例中4例はHPA法にて陰性であり,HPA法による定量的測定法は膵癌診断の特異性を高めることが可能である.膵液中K-ras変異のHPA法による陽性率を腫瘍径別にみると,TS_1 57%(4/7),TS_2 60%(6/10),TS_3 78%(7/9),TS_4 67%(2/3)であり,腫瘍径による明らかな差異はなく,TS_1症例でも比較的高い陽性率を示すことから,小膵癌の診断にも有用である. 3.p53のエクソン5,6,7,8に対応するプライマーを用いてPCR-SSCP法で分析し,直接塩基配列法にて塩基配列を決定した.膵液中p53変異はPCで42%(10/24)に陽性であったが,膵管内乳頭腺腫2例とCP20例ではいずれも陰性であり,p53変異の癌特異性は優れていた.同時に検索したK-rasと対比すると両者ともに変異陽性は8例で,いずれか一方のみ変異陽性はp53で2例,K-rasで11例に認められた.結局,いずれかに変異を認めたものは24例中21例(88%)であり,K-rasの補完にも有用である.
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