終脳特異的樹状突起性細胞接着分子テレンセファリンのシナプス可塑性における役割
Project/Area Number |
08270239
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research on Priority Areas
|
Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Osaka Medical College |
Principal Investigator |
吉原 良浩 大阪医科大学, 医学部, 助教授 (20220717)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森 憲作 理化学研究所, フロンティア・ニューロン機能研究グループ, ディレクター (60008563)
鏡山 博行 大阪医科大学, 医学部, 教授 (80028555)
|
Project Period (FY) |
1996
|
Project Status |
Completed (Fiscal Year 1996)
|
Budget Amount *help |
¥2,000,000 (Direct Cost: ¥2,000,000)
Fiscal Year 1996: ¥2,000,000 (Direct Cost: ¥2,000,000)
|
Keywords | 神経可塑性 / 海馬 / シナプス / 長期増強現象 / 樹状突起性細胞接着分子 / テレンセファリン / 遺伝子欠損マウス |
Research Abstract |
脳の最も吻側のセグメントである終脳は大脳皮質・海馬などの領域を含み、学習・記憶・各種知覚情報の統合、随意運動の調節などの様々な高次脳機能を司っている。申請者らは終脳セグメントに特異的に発現する膜蛋白質テレンセファリン(TLN)を発見し、本分子が免疫グロブリン・スーパーファミリーに属する新規の細胞認識・接着分子であることを報告したきた。また、終脳特異的発現、神経細胞特異的発現、樹状突起膜への選択的ソーティング、成体における高い発現レベルの維持などから、TLNがシナプスの可塑性に関与する可能性が示唆されてきた。さらに、海馬におけるLTPなどの可塑性変化に応じて、樹状突起の形態的変化(スパインの構造変化、シナプス前膜との接触面の増加など)が報告されており、そのような現象に細胞間の認識・接着を司る分子が関与していると考えられている。そこで本研究ではシナプス可塑性を制御する分子の候補としてTLNをとりあげ、電気生理学的・行動学的・生化学的・分子生物学的および発生工学的手法を用いてその可能性を追及した。 (1)海馬におけるTLN蛋白質存在部位の免疫電子顕微鏡的観察 TLN蛋白質を特異的に認識する抗体を作製し、ラット海馬CA1領域におけるTLNの局在を免疫電顕により解析した。TLNは錐体細胞の樹状突起および細胞体の形質膜に存在していたが、軸索には全く検出されなかった。また、樹状突起のスパインに強い免疫活性が観察され、さらにシナプスを取り囲む部位に局在していた。 (2)海馬スライス標本LTPの発現・維持に対する抗TLN抗体、可溶性リコンビナントTLN蛋白質の抑制作用 ラット海馬スライスにおいて、Schaffer側枝-CA1領域のLTPを電気生理学的手法により記録した。記録部位近傍への抗TLN抗体あるいは可溶性リコンビナントTLN蛋白質を注入により、LTPの形成が阻害されることを見い出した。このLTP抑制効果はSchaffer側枝の高頻度刺激の直後から可溶性リコンビナントTLN蛋白質を注入した場合にも見られ、LTPの初期誘導よりもむしろLTPのdevelopmentにTLNが関与していると考えられた。 (1)および(2)の結果より、後シナプス部の周辺に存在するTLNが高頻度刺激後の代謝過程あるいはスパインおよびシナプスの形態変化において何らかの役割を担っているのではないかと推測している。 (3)発生工学的手法を用いてのTLN遺伝子欠損マウスの作製 マウスTLNゲノムDNAを用いてtargeting vectorを構築し、マウス胚幹細胞(ES細胞)における相同組み換えを行った。得られたTLN遺伝子欠損ES細胞株を用いてのキメラマウスの作製に現在成功したところであり、今後TLN遺伝子欠損マウスを樹立することにより、TLNの神経可塑性における機能を解析できると考えている。
|
Report
(1 results)
Research Products
(6 results)