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¥2,000,000 (Direct Cost: ¥2,000,000)
Fiscal Year 1996: ¥2,000,000 (Direct Cost: ¥2,000,000)
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Research Abstract |
脳神経回路の形成におけるシナプス伝達機能と脳機能の発達を明らかにすることを目的とし,軟骨魚の最大の網様体脊髄路ニューロンであるマウスナ-(M-)細胞を用いて主に電気生理学的なアプローチで研究を行った.M-細胞は魚類や幼生の両生類の延髄に左右一対存在し,侵害刺激からの逃避反応をトリガーする司令ニューロンであり,そのシナプス機能の発達は運動機能の発達に直接結びつく.ゼブラフィッシュのM-細胞は分化・シナプス形成過程に関する形態学的知見から,発達期のシナプスを研究するのに適した系である.しかし,シナプスの構成や機能に関する知見は極めて乏しい.そこで,成魚のM-細胞の入出力回路を明らかにすることから始めた.M-細胞特有のグリア構造であるaxon capによる電場電位を指標にM-細胞に微小電極を刺入すると,脊髄刺激によって軸索側枝からの反回性抑制が記録された.また,聴覚刺激を与えると,M-細胞の樹状突起上のgap junctionとグルタミン酸作働性シナプスを介する急峻な脱分極電位とそれに続く抑制性シナプス応答が記録された.反回性および順行性抑制性シナプス応答はグリシン受容体の阻害剤であるストリキニンで消失した.したがって,M-細胞の聴覚入力と出力信号はグリシン作動性のfeedforward抑制とfeedback抑制によって強力に制御されていることが示唆された.シナプス形成期の抑制性シナプスの伝達特性を調べるために,単位シナプス電位(unitary IPSP)の振幅のゆらぎを量子解析するシステムを確立した.M-細胞に単シナプス結合する抑制性介在ニューロンの軸索に微小電極を刺入し単一ニューロンを賦活しunitaryIPSPを記録した.そのゆらぎは量子的に振る舞い,二項分布を仮定した最尤推定から伝達物質の放出確率(p),量子サイズ(q),放出部位数(N)を推定した.聴神経のテタヌス刺激で発現する長期増強では,p(およびN)が上昇し,qは一定であった.このような伝達特性を持つ抑制性シナプスが,発達初期において逃避運動の獲得・発達や適応に果たす役割を,今後探る.
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