Research Abstract |
(1)アーユルヴェーダ原典研究により,インド医学における緩和医療への転換点をトリド-ジャ理論から明らかにした。三大医学書『チャラカサンヒタ-』『スシュルタサンヒタ-』『アシュタアンガフリダヤサンヒタ-』を精読し、予後不良の疾患,具体例として糖尿病,およびがんの鑑別法、緩和治療、ターミナルケアの方法と今日の医療とを比較検討した。 (2)今日ターミナルケアの手法として、医療現場で注目されているナーシングインターベンションのひとつセラピューティク・タッチの理論的背景が伝統的コスモロジーに基づいたインド医学にあることを提示した。また,仏典に記述される癒しの場面でも,今日のセラピューティック・タッチにあたる「手当て」が頻繁に用いられていたことを明らかにした。 (3)がんなどの難治性疾患に苦しむ患者に対する、症状緩和、精神的支持,さらに癒しのための看護診断である「エネルギー場の乱れ」のルーツがマ-サ・ロジャース博士のユニタリー・ヒューマン・ビ-イングおよびユニタリー・パーソンの理論にあり,実は博士がインド哲学のヴェーダーンタ思想によって自らの理論を深めていった過程を明らかにした。 (4)限られた命を自覚し、有終の最後を飾るライフスタイル、自己の死をも尊厳の中に迎える生きざまが求められる疾患の中で,精神神経免疫学的中研究の必要な予後不良の神経難病,筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者・家族に対して療養生活実態,生き抜く条件,安楽死・尊厳死の是非についてアンケートおよび聞き取り調査を実施した。また,同内容の調査をがん患者家族に実施し,その内容を相互に比較検討した。その結果,患者が「安楽死,尊厳死を希望する要因」としては,「緩和ケアの不足」,「ソーシャルサポートの脆弱」,「不十分な情報提供」が強く示唆された。一方,「信念をもって病気と闘い抜く要因」は,「決断力」,「行き方に満足」,「必要なときの助け」,「頼れる親戚・友人」,「十分かつ頻回の情報」であった。
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