Research Abstract |
1.準備期(平成8年5月) 文献所蔵者・「正派邦楽会」(中島靖子方)に文献の覆刻の交渉を行ったが、正派記念事業として全資料を影印発行するとの所蔵者の強い希望があり、主要文献の翻刻・評釈のみとした。 2.第一期(平成8年6月〜11月) (1)超譽徳應著『筑紫筝秘録』,松隅桃仙著『筑紫筝秘録口訣』,武富咸亮著『月下記』(米川操軒の項)について,解読と評釈を終え,出版用原版を作成した。前二者について,平成8年4月,6月に発行の予定である。 (2)伊東龍卿著『筑紫樂詠曲秘訣訓解』については,新たに上野学園大学附属図書館・日本音楽資料室所蔵本のあることが判明,これと照合中であり,本年度中には原版完成の予定。 (3)この期間中に,『筑紫筝秘録口訣』の検討から,筑紫筝の演奏姿勢について,従来の立て膝説に対立する坐り方のあることを発見。その報告を『東洋音楽研究』に投稿,受理された(62号・平成9年8月発行予定)。また,初期において筑紫筝の理論整理にあたったのは三代・超譽徳應であるらしいことが判明した。 3.第二期(平成8年12月〜9年2月),第三期(平成9年3月) NHK放送ライブラリー殿のご好意により,「富貴」テープ(村井れい、井上ミナ演奏の2種)のコピーを入手し解析に着手,次の知見が得られた。 (1)両者の演奏とも歌謡に半音が明らかに混入しており、初期の楽譜との手法のずれがあり、古格を保存したものとはいえない。井上ミナ演奏のものは筝の調弦にもずれがあり、資料としての価値が低い。 (2)両者とも伊東龍卿著『筑紫樂詠曲秘訣訓解』に記載のある演奏手法・唱法の細目には則っていない。 (3)基本的な手法,「掻き手」,「ワキ」,「打ち」,「引く」,「長連」等について解析し,類似の響きを出すことを得た。これらの手法の,例えば「ワリ」,「ウラ」,「スル爪」等に生田流の影響が入っている。 (4)復元には,『糸竹初心集』や室町時代の雅樂の「越殿樂」譜にむしろ拠るべきである。 上記の知見に基づき、復元作業を継続中である。(平成9年3月10日現在の報告)
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