Research Abstract |
本研究の主眼は,(1)「文化グローバル化」に関連した欧米系の文献を学際的観点から収集,整理し,(2)これをもとに,社会学理論の文脈での有効な分析図式を作成すること,さらに,(3)グローバル文化の国際比較研究を計画すること,であった。(1)の文献研究に関しては,80年代以降のものに重点を置いた(70年代以前については,拙著『文化と価値:文化体系論ノート』(1977)および『T.パーソンズ 文化システム論』(訳,解説,1991)において扱った)。グローバル現象については,60年代のR.Aron,A.Ethioniらのinternational reration分析に発して,直接にはI.Wallerstein,A,Giddensらの業績が顕著であるが,文化との関連でこの問題を扱ったものは,M.Featherstone,R.Robertson,B.S.TurnerといったSage出版グループの研究成果にみるべきものが多い。米国のG.RitzerによるMcDonaldizationの研究は,伝統的社会学理論の延長上に消費文化のグローバル化を分析したもので注目に値する。 (2)以上の先行研究を参考にしつつ,社会学理論の文脈で次のような分析図式を作製した。つまり,まず第一に,文化の構成要素(文化システムの下位システム)を細分化し,二つの軸(globalize-localize,集積性の高いもの-集積性の低いもの)を設定する。これによって分類された四次元の文化要素が,不均衡に変化,発展し,社会システムの構造化の要因をなしていた文化の機能が低下し,文化と社会の両システムのズレが増大してゆく,という理論的帰結を得た。これについては,1996年7月フィンランド,タンペレ大における国際学会で発表した。(3)については,B.S.Turnerをリーダーとして,Generation Study of the Post War Elite研究を発足させ,共有文化(グローバル文化)の持続性について,数ヶ国の比較研究に着手しつつあるが,現在B.S.Turnerによるオーストラリアにおける予備調査が進行中である。
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