鉄鋼大手製鉄所におけるメンテナンス労働の現段階的特質を実証的に明らかにするために、製鉄所への聴取調査を中心とする調査研究を行った。なお、当初の計画では鉄鋼大手A社の六製鉄所を調査する予定であったが、年度内調査の日程調整がつかない製鉄所があったため、調査対象を同じく鉄鋼大手のB・C・D社の各製鉄所に拡大した。これらの製鉄所調査等から得られた主な知見をいくつか列挙する。 1. 製鉄所によって若干の違いはあるが、メンテナンスのうちの実際の補修作業は基本的に分社化・社外工化されている。 2. 製鉄所本体が担うメンテナンス業務は、点検、修理計画立案、予備品管理、設備改善、設備技術開発等であるが、このうち前三者はブルーが、後二者はホワイトが基本的に分担する。 3. ブルーが分担する点検のうち、今日では日常点検は基本的にラインマンに委ねられている。TPM活動がその基盤を作っている。メンテナンスマンはラインマンからの情報を収集しつつ定期点検・精密点検を行う。 4. メンテナンスマンの労働は、点検を除けば計画立案等のデスクワークであり、ホワイトの労働にかなり接近している。また、設備改善においても単なる補助以上の役割を果たすようになっているという。その意味ではまさにグレー・カラー的である。 これらの知見は、これまで不分明だったメンテナンス労働の研究を進めるための出発点であるが、従来の漠然ともたれていたイメージとは異なったメンテナンス労働像を予感させるものと考える。
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