Research Abstract |
本研究では超準解析の手法を用いることにより,アンダーソンの超有限乱歩に基づく擾乱の入ったランダムなある超準的常微分方程式を,コンパクトで連結な,可微分リーマン多様体Mの超準拡大の上で考え,その方程式を定める確率力学系を調べた.このような取り扱いは,超準確率解析を一般に可微分多様体の超準拡大上で展開するために有用な方法を提供するものであると考える.多様体としては線形群構造として,直交群構造の与えられた場合を考えたことになる.この超準確率力学系を通して,関連するランジュバン型の確率微分方程式,すなわちランダムに加速される粒子系の運動を記述する方程式の持つ性質を超準的に考察した.また,Mの接バンドルの超準拡大の上でも同等の方程式を与えた.そして考えている超準確率力学系に付随する,Mの接バンドル上の確率過程(超準確率力学系の解の,超準解析の意味での標準部分)について,その生成作用素に関する「超準的な意味での基本解」の存在性を確かめ,その表示式ともとの超準確率力学系との幾何学的関連を調べた. また,Mの超準拡大上の,超準確率力学系の運動速度を表す確率過程の標準部分について,Mに与えられたリーマン計量に関する,あるモーメント評価を得た. さらに,リーマン多様体としてのn次直交群の上であるランダムに加速される運動を記述する方程式に対応する超準確率力学系の解のある種の表示も得られた. 以上,得られた成果については論文としてまとめつつある. なお,最初に予定していた,主ファイバー束の接続に依存する超準確率力学系が接続のゲージ交換により受ける変化については研究途上であり,将来の研究へつなげたい.
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