Research Abstract |
これまで過去の気候変動は数百年から数千年という長い時間をかけて起こるものと考えられてきた。しかし最近の研究により数年から数十年で引き起こされることが明らかになりつつあることから,本研究の第一の目的を分析の時間精度をあげることにした。 有機物分析の時間分解のを上げるうえで重要な点は,試料の量を少なくできることと分析時間を少なくすることであるが,これまで知られている有機物分析法でもっとも適当な方法は,熱分解GC-MS法である。しかしながら,熱分解GC-MS法は生成物の同定,あるいは生成物の分解の程度が高いことから起源物質の特定が容易でないなどの欠点がある。 そこでテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)を試料に添加することによって,熱分解と同時に生成物のメチル化を行う方法(熱分解TMAH法)の基礎的な検討を,バイカル湖および琵琶湖堆積物用いて行った。 その結果,生成物の主なものはリグニンフェノール類(p-ヒドロキシ類,バニリン類,シリンジル類,シンナミル類他),脂肪酸類(C5-C30)などの他に,本分析法としては今回新たにアルカン類(C8-C30),アルケン類(C8-C30),ジカルボン酸類(C16-C26),ω-ヒドロキシ酸類(C16-C28),アルコール類(C16-C30),クチン酸類(Di-OH C16 acid,mono-OH C16 diacid,Tri-OH C18 acid)などが検出されることがわかった。ゆえに熱分解TMAH法は従来のアルカリ酸化分解法とほぼ同様かあるいはそれを上回る生成物を解析できることがわかった(山本・石渡,1996)。 バイカル湖堆積物の場合,試料の量が約4mgから20mg程度で十分分析できることから,今後飛躍的に多くの堆積物試料の有機物分析ができることがわかった。現在バイカル湖堆積物の試料を本方法で分析中である。
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