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¥1,900,000 (Direct Cost: ¥1,900,000)
Fiscal Year 1996: ¥1,900,000 (Direct Cost: ¥1,900,000)
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Research Abstract |
分子内と分子間の双方にはたらく電荷移動相互作用のバランスにより新しい電子物性を期待しうる有機固体の構築に向け、電子供与性の電子系Dと受容性の系A擬共役π結合でつないで極性の高い分子を創出する本研究の目的に従って、D,Aとしてそれぞれtetrathiafulvalene(TTF),tetracyanoquinodimethane(TCNQ)を念頭に置いた新規分子2-(4-dicyanomethylenecyclohexa-2,5-dienylidene)-4,5-ethylenedithio-1,3-dithiole(DCDED)を設計し、キャラクタリゼーションを行うのに十分な量を合成した。そして、この分子が分子内電荷移動性の両性をもつ極性分子であることを確認したが、熱的不安定性(昇温に伴い融点を示さずに熱分解)や多くの溶媒に対する溶解度の低さ(極性溶媒にわずかに溶解)など、薄膜形成・結晶成長や物性測定を進める上での欠点も明らかになった。 これを克服すべく、DCDEDのethlenedithio基をdi(methythio)基に換えた2-(4-dicyanomethylenecyclohexa-2,5-dienylidene)-4,5-dimethylthio-1,3-dithiole(DCDDD)の合成を新たに試み、目的物質が少量ながら首尾よく得られた。この分子の分子内電荷移動性を示し、DCDEDよりも両性が向上した極性分子であることが分かって、さらに熱特性と溶解性の両方がねらいどおり本質的に改善されたことを確認した。そこで、この物質を少しでも多く獲得しようと本格合成に時間を費やしたが、反応収率の低さが妨げとなっている。 それでも、少量の高純度試料から調製した単結晶を用いて、現有装置による熱解析やX線構造解析、本研究の経費で導入したクライオスタットによる電気伝導度測定などの準備や予備的な測定を行いつつあり、結晶相転移の兆候や比較的ギャップの狭い半導体特性の示唆などが得られている。今後、DCDDDの合成をさらに進めて、高極性分子の固体物性の特徴を捉え、この方向での新規物質の開発に寄与したい。
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