Research Abstract |
現在,人類にとって最も重要な問題は,地球環境に優しいエネルギーの開発である。それに答えられる水素エネルギーの実用化のためには,エネルギー変換機能を有する水素吸蔵合金の開発が重要なポイントとなる。そこで本研究では,軽量かつ大量の水素を吸蔵できるMg_2Ni合金の水素吸蔵温度の低下を目的として,熱処理による単一相組織への均質化,第三元素の添加,急冷凝固およびメカニカルグラインディング処理(MG)による組織の均質化を行った。なお,第三添加元素としては格子体積を小さくし,水素化物を不安定化させるため,NiおよびMgより原子半径および電気陰性度の小さい元素を選択した。(1)Ni-rich Mg_2Ni合金は,熱処理によってほぼ単相組織となり,水素吸蔵開始温度は低下する。(2)第三元素添加合金では,as-cast状態でMn,Co,CuおよびZnがMg_2Ni相へ置換固溶し,Fe,Co,Cu,Al,Ag置換合金の水素吸蔵開始温度はMg_2Ni二元合金より低くなる。(3)急冷凝固処理によって鋳造材より微細で化合物の少ない組織となり,ロール側は微細で均一な組織,自由表面側は化合物相が多くなる。急冷凝固させた三元合金の格子体積は,NiリッチMg_2NI合金のそれよりも小さくなる。(4)MGをすることによって,約1時間で約1μmの粒径が得られるが,その後の変化は見られない。しかし処理時間の増加にともない,合金のアモルファス化が進む。Fe,Co,Al置換合金では,二元合金のMG材と比較すると水素吸蔵開始温度は低下するものの,最大水素吸蔵量は若干少なくなる。
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