Research Abstract |
有機ホウ素はアルケンやアルキンのハイドロボレーションにより容易に合成できる有用かつ代表的有機典型元素化合物として知られており,これを利用する有機合成反応の研究が現在も盛んに行なわれている。有機合成分野の趨勢は炭素-炭素結合の形成に向いているが,炭素-ヘテロ原子結合の形成も重要である。本研究は後者に主眼を置き,有機ホウ素の中で重要な位置を占めるアルケニルホウ素化合物について,そのホウ素を官能基置換,今回チオシアノ化,アジド化およびアセトキシ化について,穏和な条件下,位置および立体特異的に対応する官能基化アルケニルを新規に簡便合成すべく詳細な検討を促進した。その結果,(1)2-メチル-2-ブテンをボラン・THFでハイドロボレーション,その後,数種類の代表的1-アルキンについてさらに反応させ,(E)-ジシアミルアルケニルボランを常法により各々調製,同一フラスコ中ピリジンを共溶媒とし,酢酸第二銅と硝酸第二銅三水和物およびチオシアン酸カリウムと少量の水を-20℃で加え,室温で20時間攪拌反応させた後,ろ過,水洗,ホウ素残基のナトリウムパ-ボレート酸化,抽出操作を経てカラムクロマトにて生成物を単離,各種機器分析して(E)-1-チオシアナ-ト-1-アルケンの生成を確認した。異性体純度98%以上,収率70〜80%と良好であった。 (2)(E)-ジシアミルアルケニルボランにDMAを共溶媒とし,酢酸第二銅と硝酸第二銅三水和物およびアジ化ナトリウムを-20℃で加え,室温で10時間攪拌反応させた後,ホウ素残基のアルカリ性過酸化水素酸化以外は上記(1)と同様にして生成物を単離,(E)-1-アジド-1-アルケンの生成を確認した。異性体純度99%以上,収率75〜85%と良好であった。(3)常法により1-アルケニルボロン酸を調製,これにヨードベンゼンジアセテート(あるいは四酢酸鉛)とヨウ化ナトリウムをDMF中室温で15時間攪拌反応させた。生成物はカラムクロマトグラフィーにより単離,各種機器分析により同定した。反応は立体化学を反転して進行し,(E)-アルケニルボロン酸からは(Z)-体,(Z)-アルケニルボロン酸エステルからは(E)-体の酢酸アルケニルが高立体選択的(99%以上)に好収率(70〜80%)で得られた。 上記目的生成物は有用な合成中間体と考えられるが,有効な一般合成法はあまり,あるいはほとんど知られていなく,本研究が上記のようにほぼ達成され,これらの簡便合成法を開発出来たものと考えている。
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