Research Abstract |
CATCH22は,染色体22q11.2領域(2Mb)の欠失による複合隣接遺伝子症候群であると言われている.本研究の目的は,表現型と欠失領域の違いを欠失領域における多数のコスミドプローブを用い,詳細に検討することにより,表現型にそれぞれ対応する原因遺伝子を発見する一助とすることである.我々は,Oncor社N25DGCRプローブを用いたFISH法にて欠失を確認した散発性円錐動脈幹異常顔貌症候群(CAFS)126例,家族性CAFS17家系,散発性DiGorge症候群/奇形(DGA)18例について,2Mbの欠失領域内に存在する平衡転座の切断点(ADU)近傍におけるマイクロサテライト多型およびコスミドプローブによるFISH法にて,責任領域内の欠失の有無の検討を行った.その結果,CAFS 4例,DGA 1例の5例ではこの部分の欠失が認められなかった.これらの症例について,さらに欠失領域内の13種類のプローブを用いてFISH法を行い,欠失領域と表現型との関係を検討した.その結果,22q11.2欠失症候群の責任領域は,2Mbより短い(<0.5Mb)ことが判明した.またこれら5例のうち欠失領域がより短い2例は知能発達遅延が認められなかった.22q11.2領域に欠失を認めたCAFSおよびDGAは全例,円錐動脈幹異常顔貌を伴っていた.現在,欠失領域内に存在する遺伝子の塩基配列の決定を行うため,BACクローンのスクリーニングを行っている. Williams症候群(WS)は,妖精様顔貌,精神発達遅延,心疾患(大動脈弁上狭窄,末梢肺動脈狭窄)などを特徴とし,染色体7番11q23にあるエラスチン遺伝子を含む辺縁遺伝子の欠失(モノソミ-)により生ずる.我々は,Oncor社WSCRプローブを用いFISH法を行い,その結果欠失の認められなかったWSの1例と家族性大動脈弁上狭窄11例に対し,エラスチン遺伝子およびその近傍の欠失の有無を検索するため,UCLAのKorenberg博士よりもらいうけた3つのプローブ(1148G3:エラスチン遺伝子を含む100Kb,363B4:エラスチンよりテロメア約100Kb,PAC117G:エラスチンの隣接遺伝子であるLIMK1遺伝子の全長を含む)によりFISH法を施行した.結果はいずれの症例でもこれらのプローブでは欠失は認められなかった.このため現在エラスチン遺伝子の点突然変異と微少欠失の検索を行っている.またWSの1例においてWSCRプローブにて染色体1番と7番の相互転座を認めた.さらにWSのうち顔貌が典型的でなく精神発達遅延もごく程度な症例では,Korenberg博士よりの1184P84(エラスチン隣接遺伝子を含む)プローブにより欠失の範囲が他より小さいことが確認された.
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