Research Abstract |
腱板疾患の肩痛と滑膜炎の相関関係を調べるために、肩甲上腕関節(以下、GH)および肩峰下滑液包(以下、SAB)滑膜中において、疼痛誘発サイトカインであるインターロイキン1β(IL-1β)とその拮抗物質であるインターロイキン1レセプターアンタゴニスト(sIL-1ra,icIL-1ra)の遺伝子発現量をRT-PCRを用いて測定した。対象は、腱板が完全断裂している群(Torn group)20例と完全断裂していない群(Non-torn group)19例であり、手術時無菌的に滑膜を採取した。疼痛の程度は術前にPain Scaleを用いて10段階で評価した。対照群には肩痛を有しない反復性肩関節前方脱臼例10例のSABをもちいた。Pain ScaleとIL-1β,sIL-1ra,icIL-1ra遺伝子発現量はSABでは相関関係は認められたが(P<0.001)、GHでは認めなかった。IL-1β,sIL-1ra,icIL-1raの遺伝子発現量は、Non-torn groupではSAB優位に(P<0.001)、Torn groupではGH優位であった(P<0.001)。Pain Scaleによる両群の比較では、Non-torn groupがTorn groupに比し優位(P<0.01)に疼痛の程度が強く上記の結果に一致していた。すなわち、腱板が完全断裂するか否かによってSAB、GHにおける滑膜炎の主座は異り、SABにおけるIL-1β産生が腱板疾患の肩痛発現に関与していることが本研究の結果より明かとなった。
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