Research Abstract |
左右両耳聴による音源の定位に関連する大脳皮質の活動を,脳磁図によって記録し,検討した。左右の耳に到達する時間差(interaural time difference,ITD)をつけた左右相関ノイズの仮想現実音(音像)による刺激を作製し,音圧を較正した左右のチューブイヤホンから刺激音を提示した。音像刺激としては,従来の音像刺激とは異なり,相関ノイズを,1秒前後の持続時間の無相関ノイズ(音像を結ばない)に挟んで提示し,停止した音像が突然現われるように聞こえ,音像の動きによる反応が混入せず,音像の位置にのみ対する反応が得られるようにした。コントロールとして,2ないし5周波数の純音バースト刺激を用い,推定電流双極子(estimated current dipole,ECD)の位置がトノトピーを示すことから,大脳皮質1次聴覚野の反応の指標とした。健聴被験者に対し,特定の位置に音が来る回数を数えさせ,セッション毎に数える音像の位置を変え,注意による影響をバランスさせた。無相関ノイズから相関ノイズへの移行から,潜時約140msで脳波上ならびに側頭上から記録した脳磁図にピークが見られ,記録脳と反対側の音像に対してより〓〓な反応が見られた。誘発反応を起こしている神経細胞の重心であると考えられるECDの平均位置は,純音バーストと比べると,右で数mm前方,左で後方であった。すなわち,純音バーストの反応の中心を第1次聴覚野と仮定すると,相関ノイズの音像定位に関わる大脳皮質部分の中心は,第1次聴覚領ではない可能性がある。各被験者で,異なる場所の音像のECDの位置は異なるので,音の外空間が何らかの形で大脳皮質上にマップされている可能性がある。今後は,移動する相関ノイズの刺激をも使用し,音像の移動加わることによる反応の違いを検討し,さらに,音による方向感覚の障害を持つ患者のデータとも比較検討していく。
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