Research Abstract |
ブタ歯胚及びラット切歯,臼歯歯胚のエナメル蛋白に関して、免疫化学的、光顕および電顕免疫組織化学的に検索し、以下の結果を得た。 1.ラットの小柱鞘蛋白であるアメロブラスチンの合成,分泌,分解,局在について明らかにした。切歯及び臼歯歯胚において,アメロブラスチンは分子量55kDaのコア蛋白として小胞体で合成され,ゴルジ装置でC端側近くが修飾され,分子量65kDaの糖蛋白となり分泌される。分泌後は速やかに分解され,N端側の分子量約20kDa蛋白と,C端側の48kDa蛋白になる。N端側分解産物は比較的安定で,ゆっくりと分解されその一部は小柱鞘に集まる。C端側分解産物はさらに分解され,幼若エナメル質から速やかに消失する。エナメル質の初期石灰化部位では,アメロブラスチンの局在は石灰化開始と時間的,空間的に一致しない。また,アメロブラスチンまたはそのC端側分解産物は,エナメル芽細胞の細胞膜をエナメル基質に結合していることを示す所見が得られ,成熟期エナメル芽細胞においてもアメロブラスチンが合成,分泌されていることとあわせ,アメリブラスチンがエナメル質の石灰化開始に深く関係しているとは考えられなかった。 2.ブタの小柱鞘蛋白であるシースリンについて検討し,その合成,分泌,分解,局在様式が,基本的にラットのアメロブラスチンの合成,分泌,分解,局在様式と同じであることを明らかにした。また初期石灰化部位における局在も,アメラブラスチント同様に石灰化開始と時間的,空間的に一致せず,シースリンもエナメル質の石灰化開始に深く関与しているとは考えられなかった。 3.ブタのエナメリンの合成,分泌,分解,局在について明らかにした。エナメリンは186kDaの糖蛋白として合成され,分泌後きわめて速やかにC端部が切断され,150kDa蛋白となる。この150kDa蛋白はさらに分解され,N端部の89kDa蛋白を生じる。初期石灰化部位では,89kDa蛋白の局在が石灰化開始と時間的,空間的にほぼ一致し,エナメリンの分解産物である89kDa蛋白がエナメル質の石灰化に重要な役割を果たしていると考えられた。
|