Research Abstract |
目的 武道をはじめとする東洋的修行法では,丹田をきたえるためには,正しい姿勢(調身)とともに正しい呼吸(調息)が必要であることが説かれている。姿勢と呼吸の関連性については,過去の研究からいくつかの知見が得られている。しかし,東洋的修行法を対象として,姿勢と呼吸との関連を検討している研究は極めて稀であり,調身と調息の効用は未だ明らかにされていない。そこで本研究では禅や武道の各種修行法,ならびに気功法,養生法における姿勢と呼吸法に着目し,各種修行法中の呼吸と姿勢との関連をみようとしたものである。 被検者 被検者は整体法(整体協会)の指導者1名(T.Y.,男性,修行年数33年,169.2cm,58.5kg),気功法の指導者1名(T.O.,男性,修行年数10年,177.1cm,68.8kg),および西野流呼吸法の実践者1名(N.K.,女性,修行年数4年,161.5cm,43.4kg)であった。 結果 被検者T.Y.の脊髄呼吸では,正座・立位では安静時と同様の順式と思われる波形をしているが,仰臥位においては呼気の開始と同期して胸部の拡張を示す波形がみられた。呼気の際に胸郭が拡張するというのは,通常では考えにくい現象である。 次に被検者T.O.の静功時の呼吸波形は,順式と判断されるものであった。特に部分的に呼気と同時に胸部が拡張する傾向がみられ,順式の腹式呼吸を行っていることが示唆される。 被検者N.K.の足芯呼吸では,前半部分は体幹からの波形が複雑な動きを示しており判別は難しい。しかし後半部分では下腹部が胸部・上腹部と逆の変化をしており、逆式の呼吸が行われていることがわかる。また,同時に姿勢についての計測を行ったところ,呼吸法を行う際に腰反姿勢をとる場合と,逆に背中を真っ直ぐにしたまま臀部を引っ込めた姿勢をとる場合の二通りの姿勢の調え方がみられた。
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