Research Abstract |
PACE4は,Kexin様プロテアーゼファミリーに属するCa^<2+>依存性セリンプロテアーゼで,生理活性ペプチドや血清タンパク,レセプターのプロセシングに重要な働きを有する.PACE4タンパクはN末よりシグナルペプチド,プロペプチド,サイライシン様触媒ドメイン,ホモBドメイン,システインリッチドメインから構成されている.私共は,PACE4には3′側の異なるアイソフォームが全部で7種類存在することをcDNAクローニングにより証明し,各アイソフォームの機能,細胞特異発現について研究を進めてきた.本研究では,PACE4遺伝子をヒトゲノムライブラリーよりクローニングし,その構造解析より,アイソフォームの生成機構,発現調節機序を明らかにしようとした.またアイソフォーム(A-I,A-II,C,E-I,E-II)に関しては,その生合成,細胞内局在,共発現実験による基質特異性の同定について研究を行った.その結果,ヒトPACE4遺伝子は25ケのエクソンから成る長さ300kb以上の複雑な遺伝子であることが判明し,選択的スプライシングによるアイソフォームの生成機構が明らかとなった.遺伝子の5′-上流域にはTATA,CAT boxは認められなかったが,転写因子SP1,AP1,AP2の結合部位が存在した.また6回連続した特異な塩基配列が存在し,PACE4の発現調節に重要な役割を持つと推定された.培養細胞の過剰発現系を用い各アイソフォームの細胞内動態やその局在性に差があることも判明した.PACE4A,4Eはいずれもトランスゴルジ領域に局在するが,PACE4Aは一部細胞外へ分泌されるのに対し,4Eは全んど分泌しなかった.PACE4Cは小胞体に局在した.これらの成果は,論文発表以外に,アジア・オセアニア生化学・分子生物学会,日本生化学大会において発表された.
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