Research Abstract |
鳥類胚では,将来消化管内胚葉になる細胞は胚盤葉期には胚盤葉上層に存在し,続く原条期において原条を通って上層より下層へ陥入してくることにより生ずるが,消化管内胚葉が成立する機構については不明である。本研究では,胚盤葉期鶏胚を用い,本来と異なる位置に実験的に2次胚の形成を誘導し,消化管内胚葉の形成が起こるか検討した。胚盤葉期における予定消化管内胚葉細胞の局在:胚の微小領域を蛍光色素(CM-DiI等)で標識しインビトロで原条期まで発生させ標識細胞の運命を追跡することにより,胚盤葉上層後部の細胞が中胚葉が消化管内胚葉に寄与し前半の細胞は主に外胚葉と胚外内胚葉になることを明らかにし,これまでの報告を確認した。2次胚における胚内内胚葉の形成:胚盤葉期鶏胚の前半部を後半より切り放し,その明域前縁部に鶉胚より切り出した胚盤葉下層後部(Koller's sickleを含む)を移植して培養し,その影響により本来生ずることのない2次的な原条を形成させた。この時胚盤葉上層の一部を標識しておくことにより,本来胚内の内胚葉にはならないはずの上層前部の細胞が形成された2次胚の原条近傍の胚内内胚葉に寄与することを確認した。2次胚胚内内胚葉の消化管内胚葉への分化:2次胚の原条を含む範囲を切り出し鶏3日胚体腔内に移植して長期間培養し,2次胚が本当に胚体を形成するか検討した。表皮・神経などの外胚葉組織や軟骨・筋などの中胚葉組織の他,胃・腸などの消化管内胚葉が分化し,さらにこれらの組織が移植片由来(鶉細胞)でなく胚盤葉上層前部の(鶏)細胞由来であることを確認した。以上より,本来外胚葉と胚外内胚葉になる胚盤葉上層前部の細胞は胚盤葉下層後部の影響により消化管内胚葉になり得ることが示された。
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