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¥2,200,000 (Direct Cost: ¥2,200,000)
Fiscal Year 1996: ¥2,200,000 (Direct Cost: ¥2,200,000)
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Research Abstract |
本研究はエネルギー供給源として以外のATPを中心とするリン酸化合物代謝動態と,その肝細胞内情報伝達機構に係わる役割の^<31>P-MRS法による解析の可能性を検討する目的で立案し,下記の成果を得た。 1.定流量肝灌流システムを構築し,既存FT-NMR装置と組み合わせて,ラット摘出肝の^<31>P-NMRスペクトル計測のためのS/Nや分解能などの最適測定条件を明らかにした。 2.ラット灌流肝臓にコレラ毒素を投与し,投与後60分間にわたりスペクトルを計測した。この結果,コレラ毒素投与直後から肝内ATPと無機リン(Pi)はともに徐々に減少し続けた。また,これらの減少程度はコレラ毒素投与量に依存する傾向を示した。一方,PMEには有意な変化は認められなかった。またATP/Piもほとんど変化せず,コレラ毒素投与後も肝内エネルギー状態はほぼ一定に保たれていることがわかった。 3.蛋白質リン酸化酵素活性阻害剤であるK-252bを灌流30分前にラットに静注後の摘出灌流肝臓に同様にコレラ毒素を投与し,ATP,Pi,PMEおよびATP/Piの経時変化を検討した。この結果、ATPとPiはコレラ毒素投与後から徐々に減少するが,その程度は上記(2)の結果に比べて有意に抑制されることがわかった。しかし,PMEとATP/Piは投与量に依らず,コレラ毒素単独投与群とほぼ同レベルに保たれていた。 4.上記(2)および(3)において灌流後の流出灌流液を経時的に採取し,cAMP濃度を測定した。コレラ毒素単独投与群では投与直後から灌流液中のcAMP濃度が急速に上昇し,投与後30分で最高値を示した。また,cAMP濃度の上昇はコレラ毒素投与量に依存する傾向を示した。一方,K-252b前投与群でもコレラ毒素単独投与群と同様のcAMP濃度変化を示した。 5.Piの上昇を伴わないATPの減少と蛋白質リン酸化酵素活性阻害剤によるATP減少程度の抑制,さらにcAMPの一過性の上昇という結果は細胞内情報伝達機構に関連した代謝動態を反映している可能性を示唆している。
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