Budget Amount *help |
¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
Fiscal Year 1996: ¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
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Research Abstract |
研究の準備作業として、哲学的な指示理論および意味理論についての文献を選択的に収集し、学説史的・理論的な整理と検討を行なった。とりわけ、エヴァンズ(Evans, G.)のVarieties of Reference, Oxford, 1982での前提説批判に的を絞り、ラッセルの記述理論の理論構造を整理した上で、それに対する批判として登場したストローソンの前提説の展開を学説史の中に適切に位置づけ、エヴァンスのストローソン批判の眼目を再構成する作業を試みた。 もう一つの準備作業として、形式意味論に関する最近の動向を把握することに努めた。たとえばChierchia, G., Dynamics of Meaning, Chicago, 1995やKamp, H.& Reyle, U., From Discourse to Logic, Kluwer, 1993等により、最近の言語学研究におけるディスコース表示意味論や動的意味論の成果を調査・検討した。とりわけキエルキアの前提投射についての取扱いに力点を置いた。 こうした準備作業に立脚して、前提説に関わる動的意味論の問題設定を言語哲学における問題設定と比較検討した。概括的な結論としては、エヴァンズ流の指示理論は、論理学的な道具立てに基づく形式意味論に親和性を有しつつも、それのみのうちにおいて定式化するのは困難である。エヴァンズにおける意味論への志向性を軽視することは避けながら、ハイム(Heim, I.)やソームズ(Soames, S.)らによる語用論的研究やフォコニエ(Fauconnier, G.)やによる認知科学的研究を新たな参照軸として哲学的指示理論の再構成を図る必要性が確認された。
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