Research Abstract |
空間的・時間的に局在する複数の運動信号の統合条件を明らかにするため,知覚される運動方向の異なる複数の窓を用い,運動信号の統合の指標として見えの運動方向を測定した. 第一実験では同一の窓内または2つの窓のそれぞれに提示された傾きの異なる2本の直線の運動が一方向への運動として統合して知覚される確率を空間的・時間的オーバーラップを独立変数として測定した.実験の結果,提示時間のオーバーラップが100%,すなわち2本の直線が同期して窓端から現れる場合には,統合運動が知覚される確率は同じ窓内に提示されて空間的にオーバーラップする場合と同様別々の窓に提示された場合でも高かったが,同期しない場合には空間的オーバーラップの有無や窓間の距離に依存した.また,特徴点の効果は同期しない場合にのみ認められた. 次に,空間的相互作用の限界を調べるために多義的な運動方向の知覚を生ずる多数の窓の中に一方向への知覚を生ずるスリット窓を配置し,多義的な窓でスリット方向に運動して見える確率を測定した.実験の結果,スリット窓までの距離(偏心度)の増大に伴って確率は減少することが示され,約1.5°で50%となった. 統合によって生じる2次元パタンの空間的規則性が運動統合に与える効果については,窓および縞の配置についてそれぞれ一定・ランダムの条件を用いて比較したが効果は認められなかった.また,同期は一定でないが空間的には規則的な場合と同期が一定で空間的には不規則な場合に比較では後者で統合運動が知覚されやすいことが示されたが,調整法により見えの運動方向を測定した実験においては効果は明確でなかった. これらの結果から,運動が統合して知覚される条件として時間的同期が最も重要であり,続いて空間的条件すなわち空間的オーバーラップ,距離,そして特徴点の有無が重要であることが示されたが,刺激の空間的規則性については効果が認められなかった.
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