Research Abstract |
首都圏在住の男女既婚雇用者を対象にして、質問紙上に架空の条件を設定し、回答を求める、ヴィネット調査を実施した(分析対象者924人)。そして(1)夫の育児休業取得の可能性,(2)妻の就業継続の可能性、を従属変数にして、その規定要因分析を行った。結果は以下の通り。 (1)夫の育児遂行の可能性を決定づける第1の要因は、夫婦の所得比較である。男性が回答者の場合、この効果は特に顕著であり、所得が夫>妻の状況では夫の育児休業は平均で5.57%たらずであるが、夫<妻の状況では20.1%と育児休業率は約3.6倍増加する。女性が回答者の場合でも同様状況で2.58倍増加する。 (2)妻の出産後の就業率を決定づける第1の要因は、産休明け保育が利用できるか否かである。この効果は女性が回答者の場合特に顕著である。女性が回答者の場合、妻の就業継続率の平均は89.04%と回答者が女性雇用者であることもあって特に高いが、保育利用不可の状況から可能に変化するのみで、平均12.69%増加する。 (3)夫の育児休業率の推計値を男女回答者別に、ヴィネット18状況ごとに算出すると、現状(状況4/(1)所得:夫>妻,(2)産休明け保育不能,(3)休業給付25%)で男性3.92%,女性9.57%と最低であるが状況を変えることによって男性25.79%,女性で26.77%(ともに状況3/(1)所得:夫<妻,(2)産休明け保育可能,(3)休業給付100%)まで改善可能である。 (4)妻の出産後の就業継続率の推計値を男女回答者別に、ヴィネット18状況ごとに算出すると、現状がやはり最低率で、状況を変えることによって(男女回答者とも状況3が最高率)、最高で、男性回答者で31.09%,女性回答者で21.63%改善可能である。
|