近現代ドイツ文学における自己言及構造と「自己」概念の変貌に関する研究
Project/Area Number |
08710343
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Research Category |
Grant-in-Aid for Encouragement of Young Scientists (A)
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Field |
独語・独文学
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
鈴木 純一 北海道大学, 言語文化部, 助教授 (30216395)
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Project Period (FY) |
1996
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Project Status |
Completed (Fiscal Year 1996)
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Budget Amount *help |
¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
Fiscal Year 1996: ¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
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Keywords | 自己言及パラドクス / システム理論 / オートポイエシス / ル-マン / トーマス・マン |
Research Abstract |
本研究によって得られた成果・知見ならびに今後の展望を理論的視点からまとめると以下の4点になる。1.文学テクストにおける「自己」概念は、19世紀後半から今世紀にかけて著しい変貌を見せている。すなわち、古典派からロマン派のテクストにおける「自己」は自ら積極的に意味規定をする概念であったのに対し、リアリズム以降20世紀にかけては、社会システム・ネットワーク等によって対他的に規定される機能的な概念へと変化し、「自己」が相対比される傾向にある。(具体的には『ヴェルテル』や『ハインリッヒ・フォン・オフタ-ディンゲン』とムジルやカフカ等の作品比較において明か)2.これと連動するように、20世紀における「自己」概念は非常に可変的なものになっている。古典派、ロマン派における「自己」概念獲得の試みが普遍的あるいは固定的なものを模索する(その試みがいわゆる「ビルドゥングス・ロマン」とも考えられる)のに対し、今世紀にはそのような「自己」の放棄あるいは不可能性が前提となり、社会、言語、法などの動的システムとの関連において生産される可変的な「自己」が主流となっている。またこのことはル-マン等の社会システム理論ならびにオートポイエシス理論との著しい接近を見せている。3.一方ではそのような「自己」概念に対する忌避から来る新たな自己言及の試みも今世紀の重要な文学的主題として(特に「語りの原理の特権化」という文脈で)機能するようになっている。しかし、語りの場の自己否定などの形で生じる自己言及パラドクス等の問題を抱えている。(トーマス・マンの後期の作品やポスト・モダンの思想家たちのテクスト論)4.今後の展望として、以上のような問題性は現代免疫学における「自己」規定の問題や複雑系科学におけるカオス論ならびに「自己組織化」の構造ときわめて密接な関連があり、文系理系を問わぬより広い視点からのアプローチが望まれる。
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Report
(1 results)
Research Products
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