Project/Area Number |
08720046
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Encouragement of Young Scientists (A)
|
Allocation Type | Single-year Grants |
Research Field |
Criminal law
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
塩見 淳 京都大学, 法学研究科, 助教授 (00221292)
|
Project Period (FY) |
1996
|
Project Status |
Completed (Fiscal Year 1996)
|
Budget Amount *help |
¥1,100,000 (Direct Cost: ¥1,100,000)
Fiscal Year 1996: ¥1,100,000 (Direct Cost: ¥1,100,000)
|
Keywords | 有限会社法 / 業務執行者 / 商法 / 取締役 / 身分犯 / ドイツ |
Research Abstract |
「事実上の行為者」をめぐるドイツの議論は、とりわけ有限会社法上の「業務執行者Geschaftsfuhrer」を主体とする犯罪に関するものが注目される。そこでは、古くからの判例に変遷が見られ、これに影響を受けて学説にも顕著な対立が認められるからである。 判例については、帝国裁判所時代には、厳格に私法的な意味での業務執行者でなくてもよいとしながらも、その任命に関与した者の意図に決定的意義が与えられ、実質的に業務を行う者の責任を回避するために意図的に形式だけの業務執行者が任命されているような場合は、事実上の業務執行者を否定するという限定が加えられていた。これに対して、連邦裁判所に至ると、やがて以上の限定は取り払われ、形式的に存在する業務執行者と並んで、実質的にそのような活動を行う者にまで主体の範囲が拡張されるようになった。 学説では、一方で、判例のこのような拡張傾向を歓迎し、刑法固有の業務執行者概念の定立を説く立場が有力である。そこでは、刑法独自の視点として事実的考察方法という考え方が主張されている。対極にあるのは、法秩序の統一を強調して、刑法においても私法に完全に従属する形で業務執行者の内容を確定すべきだとする見解である。経済刑法の専門家に支持者が多い。そして、両者の中間を模索する見解として、例えば、有限会社法上の罰則相互間の論理関係から、刑法上の業務執行者概念を構築する試みが挙げられる。 このように、ドイツでは「事実上の業務執行者」を巡って興味深い議論が展開されており、この知見は、わが国でも商法に規定される取締役等の身分犯の解釈に際して有益と思われる。今後、細部をつめて、単なる紹介にとどまらず、具体的な解釈論を提示していきたいと考えている。
|