Research Abstract |
本年度の研究目的は,半分裂型ユニタリ群に対して保型表現の新谷関数を定義し,それを用いて保型L-関数の積分表示をあたえる事であった.これまでの研究で一般の新谷関数についてはその一意性を示すまでにはいたらず,新谷関数を用いた保型L-関数の積分表示を与えることはできなかった.しかしながら,従来のホイテッカー関数を用いることにより,U(n,n)×GL(n),U(n,n+1)×GL(n)の保型L-関数の積分表示による全複素平面への解析接続,およびテ-タ級数リフトによるL-関数の間の対応関係について結果を出すことができた.より詳しく次を証明することができた. (1)σをU(n,n)の非退化尖点保型表現,πをGL(n)の尖点保型表現とするとき,L-関数L(s,σ×π)は全複素平面に有理型関数として解析接続できる. (2)σ^*をU(n,n+1)の非退化尖点保型表現,πをGL(n)の尖点保型表現とするとき,L-関数L(s,σ^*×π)は全複素平面に有理型関数として解析接続できる. (3)σをU(n,n)の非退化尖点保型表現とし,そのテ-タ級数リフトをΘ(σ)とする.これはU(n,n+1)の保型表現である.いまΘ(σ)が既約かつ尖点的であるとするとき,任意のGL(n)の尖点保型表現πに対してL-関数の間にL(s,Θ(σ)×π)=L(s,π')L(s,σ×(π'×ν))なる関係がある.ここでπ'はπからガロワ群の元によるひねりで得られる尖点保型表現で,またνはテ-タ級数リフトを定義する際に与えられるイデ-ル類群の指標からなるパラメーターである. 以上の結果は新谷関数を用いることにより,より一般の非退化でない場合にも拡張できると考えられるが,これはひき続き研究されるべき課題である.
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