Research Abstract |
本研究では、4次元多様体上のリーマン計量および符号数(2,2)の擬リーマン計量(以下、(2,2)型計量と呼ぶ)の自己双対性について考察し、他の幾何構造との関連を調べた。 まず、超複素構造と両立するリーマン計量の反自己双対性に注意して、(2,2)型計量の場合にも、分裂四元数構造という概念を定義し、自己双対性と関連して次の結果を得た。 命題.4次元多様体が積分可能な分裂四元数構造をもつとする。このとき、この分裂四元数構造と両立する(2,2)型計量が存在し、その計量は自己双対である。 超複素構造をもつコンパクト複素曲面はBoyerによって分かっている。積分可能な分裂四元数構造についても同様の議論を試みたが、計量の不定値性による困難があり、現在のところ不明である。また、このような構造の特別な場合である(2,2)型超ケーラー構造に関してRicci曲率の平坦性などの基本的性質を調べた。特に、(2,2)型超ケーラー構造をもつコンパクト単連結複素曲面はK3曲面でなければならないことが分かる。逆に、K3曲面が(2,2)型超ケーラー構造をもつかどうかは不明である。(2,2)型超ケーラー構造をもつ空間として平坦な複素トーラスがある。Fernandez-Gotay-Grayは、ケーラーでないシンプレクティック多様体の構成と関連して、ある小平-Thurston曲面上に(2,2)型ケーラー計量を求めた。この(2,2)型ケーラー計量について次のことが分かった。 命題.上の(2,2)型超ケーラー計量と両立する分裂四元数構造で(2,2)型超ケーラー構造となるものが存在する。特に、この計量は自己双対かつRicci平坦である。 上記から(2,2)型超ケーラー構造を許容しても通常のケーラー構造を許容するとは限らないことが分かった。この例は、平坦な複素トーラス以外でコンパクト(2,2)型超ケーラー構造もつ最初の例と思われる。
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