Research Abstract |
本研究は,アルカリドープフラーレン超伝導体のX線吸収微細構造分光法(XAFS)から見いだされた超伝導転移温度付近での熱的揺らぎの増加をX線単結晶構造解析によって定量的に評価することを主目的とした.さらに,ラマン散乱実験からこれを確認することを目指した. アルカリドープフラーレン超伝導体の単結晶の作成を,種々の条件下で行なったが,単結晶は作成できなかった.このため,X線単結晶構造解析は実行できなかったが,これに変わるものとして,粉末X線回折実験を10Kから常温までの温度領域で詳細に行った.得られた粉末X線回折スペクトルのリ-トベルト解析により,各原子のデバイ-ワーラー因子の超伝導転移に伴う変化を詳細に調べた.この研究は,超伝導を示す物質ばかりでなく,超伝導を示さないアルカリドープフラーレンについても行って,超伝導体ではデバイ-ワーラー因子が超伝導転移温度付近で増加するが,非超伝導体では変化しないとの結果を得た.また,アルカリ金属が占める位置に対応して,デバイ-ワーラー因子の温度依存性が変わることを定量的に明らかにした. また10Kから常温までの温度領域で,詳細なラマン散乱実験を行って,アルカリドープ超伝導体中のC_<60>分子の振動の温度依存性を調べた.この結果,C_<60>の squash モードであるHg(1)モードの線幅の超伝導転移温度付近での増加,すなわち電子-フォノン相互作用の増加を見いだした.さらに,XAFSで,非超伝導体の熱的揺らぎの詳細な研究を行い,これまで超伝導体に対して得られた結果との比較検討を行った.
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