Budget Amount *help |
¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
Fiscal Year 1996: ¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
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Research Abstract |
本研究では,次の課題(I), (II)の遂行を目的とした. 課題(I) : 2, 2-ジアリール-1-メチレンシクロプロパン(1)の光誘起電子移動反応機構の解明 この課題について検討した結果,「カチオンラジカル開裂-ビラジカル環化機構」が明らかになった.この機構の特徴は,TMM型カチオンラジカル(3^<+・>)に対して増感剤アニオンラジカルからの逆電子移動が起こり,YMM型ビラジカル(3)が生ずる事である.これらの中間体はいずれも時間分解レーザー分光法とESR法で直接確認する事ができた.また光音響熱測定法では,鍵中間体である3^<+・>と増感剤アニオンラジカルが形成するイオンペアのエネルギーを直接決定し,逆電子移動過程が発熱的に起きることを明らかにした.さらに本研究ではこれをもとに反応のエネルギーダイアグラムを決定し,それは半経験的分子軌道法による理論計算からも支持された.なお,関連するピラゾリン(2)については現在合成途上であり,その反応機構の検討は今後の検討課題としたい. 課題(II):光誘起系逆電子移動のビラジカル新規発生手法としての確立 前述の(I)で明らかになったビラジカル発生の条件は,1)逆電子移動速度の高速化(速度論制御),2)逆電子移動過程と競争するカチオンラジカル状態の後続反応をいかに押さえるか(エネルギー論的制御),の2点である.前者は従来の基本概念であった「逆電子移動過程を何如に押えるか」という考えを一新し,有機電子移動反応における逆電子移動過程の必要性を唱えるものである.また,その逆電子移動速度の制御がいわゆる「Marcusの逆転領域」に密接に関連していることは,大変興味深い.一方.後者の制御には反応のエネルギーダイアグラム解析が重要であり,光音響熱測定法が重要な知見を与えた.
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