Budget Amount *help |
¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
Fiscal Year 1996: ¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
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Research Abstract |
日本産ゴヨウマツ類のうち,高山帯に生育するハイマツPinus pumilaと山地生のキタゴヨウPinus parviflora var.pentaphyllaの間には山系によっては交雑帯が形成されている.本州中部の谷川山系における,この両者の交雑帯の遺伝的構造を,父性遺伝である葉緑体DNA(cpDNA)と母性遺伝であるミトコンドリアDNA(mtDNA)の両細胞質遺伝マーカーの空間的分布を調べることによって解析した.CpDNAの種特異マーカーはtrnL(UAA)3′exonとtrnF(GAA)の遺伝子間領域をPCRで増幅しSSCPを行うことによって得られた.MtDNAのマーカーは,nad1遺伝子のexon B〜exon CのイントロンのPCR増幅産物の断片長変異を利用することで得られた.谷川山系におけるcpDNAとmtDNAの空間的分布は極めて対照的であった.CpDNAではキタゴヨウ型のものが優先し,ハイマツ型は山頂付近の針葉形態からハイマツと認識される個体の一部にのみみつかった.一方,mtDNAのハプロタイプでは,逆にハイマツ型が優先し,針葉形態からキタゴヨウと認識される個体の一部にもみつかった.この対照的な空間的分布は,cpDNAではキタゴヨウからハイマツの方向の一方向性の遺伝浸透がおきているのに対し,mtDNAでは逆にハイマツからキタゴヨウの方向に遺伝浸透がおきている結果と考えられる.蔵王・安達良といった別山系でも同様な解析を行ったが,この二山系でもcpDNAがキタゴヨウ型でmtDNAがハイマツ型という細胞質ゲノムのキメラ個体が広く分布していた.逆の組合わせの個体は見つかっておらず,このことから一方向性の細胞質ゲノムの遺伝浸透という現象は一般性があることがわかった.
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