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¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
Fiscal Year 1996: ¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
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Research Abstract |
摘出血管を輪切りにして輪の一ヶ所を切断すると円弧状に開くことが多い.これは摘出血管の内壁に圧縮,外壁に引張りの円周方向ひずみが残留していたことを示し,血管壁が生理状態で壁内のひずみや応力を一様に保っている可能性を示唆する現象である.申請者は一昨年来,この輪の開く大きさ(開き角)が血管壁平滑筋細胞の収縮・弛緩により影響を受けることを明らかにしてきた.本研究では,平滑筋収縮に伴う血管壁のひずみ分布の変化を調べ,モデルを用いて残留応力分布を推定する一方,壁内残留応力を直接的に知る方法の確立を試みた. ラット胸大動脈からリング状試料を切出し37℃の酸素加Krebs-Henseleit液中で輪を切断した.Norepinephrine (NE)を10^<-10>Mから10^<-5>Mまで,濃度を10倍ずつ上げながら加えて平滑筋を収縮させ,夫々の濃度での開き角(円弧両端と両端から円弧上で等距離にある点とのなす角)を計測した.開き角はNE濃度の上昇に伴い一旦約15°減少(10^<-9>M)した後,増加に転じ,10^<-5>Mで初期状態から約135°増加して安定した.この結果を予め求めてあるラット胸大動脈の構成法則に当てはめ残留応力を計算したところ,内壁側の円周方向応力は-3〜-7kPaの範囲にあると推定された.次に血管壁を等方・均質・非圧縮性で互いに弾性率の異なる複数の層から成ると仮定し,各層の弾性率と残留応力を開放した時の血管形状から残留応力・ひずみ分布を計算する手法の定式化を行った.そして別途研究を進めているピペット吸引法で計測したウシ胸大動脈壁内の局所弾性率と無応力状態の血管形状を用いて残留応力を計算したところ,内壁側の応力は-20kPa程度と推察された.推定法や試料の違いから両者の差は大きいが,残留応力は数kPa〜数10kPaの範囲にあると推察された.
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