Research Abstract |
液体中で崩壊する気泡の挙動については,これまで多くの研究がなされてきた.これまで行われた理論的,数値的解析では,気泡崩壊時のマイクロジェットの生成により剛体壁に局所的に大きな圧力が加わることを予測しているが,壁面に働く力の大きさや,壁面の損傷の予測は,実験結果と定量的に一致するものではない.本研究では,気泡の崩壊や壁面の損傷に与える影響を,分子レベルのスケールで評価する第1段階として,分子動力学法による解析を行った.計算は,分子間力がレナード・ジョーンズポテンシャルで記述される系としてプラチナの固形分子で構成される平行平板間に,キセノンの液体分子が詰まっている系を考えた.計算条件として,まず,プラチナ固体壁間にキセノン液体が存在する状態で,与えられた温度に対して平衡状態を作った.そして,その状態において,下側固体壁近傍の液体より,球状の分子郡を抜き取りキャビティを形成し,それと同時にそのキャビティを崩壊させるため,上側固体壁を一定の速度で移動させた.現在のところ,上側壁面の移動に伴い,液体分子がキャビティ内に溶け込んでいく結果が得られており,期待されたキャビティの崩壊現象は得られていない.これらの結果が得られている要因として,キャビティ形成後,上側壁面を移動させる際の速度が十分大きくないため,キャビティの崩壊を起こさせるのに十分な非平衡状態を達成できていないことが考えられる.これらの問題点の解決方法としては,パラメータをさらに調整し,崩壊運動が起きる条件を探すことが考えられるが,本質的な問題点は,キャビティの形成時に分子群を抜き取るところにあると考えられる.従って,今後の改良点としては,固体壁間の液体状態において平衡状態を達成させた後,まず上側壁面を上方に引き,系全体の減圧を行い、液体に相変化を起こさせた後,急速に上壁を押し気泡の崩壊を引き起こすべきであると考えられる.
|